中村ハルコ写真展レポート!

中村ハルコ写真展「光の音  1990年代ヴァル・ドルチャの儚い瞬間」

“Sound of Light ― Attimi fuggenti nella Val d’Orcia degli anni ’90”

2025年4月5日~28日、イタリア・トスカーナ地方ヴァル・ドルチャの3会場にて、写真家・中村ハルコの写真展が開催されています。
中村が愛してやまなかった異国の地であり、夢中でシャッターを切り続けたトスカーナでの開催は、長年の願いが実現したともいえる待望の展覧会です。

1993年から1998年にかけて、彼女はこの地に深く魅せられ、最多で年に7回も日本から足を運び撮影に臨みました。
農家の老夫婦イボとイルダ、そして地元の文化的な支柱でもあるロレンツァ・サント女史、その愛娘ルイーザ・チポッラさんとの出会いは、彼女の作品に大きなインスピレーションを与えました。
ルネッサンスの時代から大切に受け継がれてきた暮らしと息を呑むような景観を、
柔らかく鮮やかな眼差しで切り取った写真たちは、今もなお色褪せることなく心に響きます。

2025年は、中村ハルコの没後20年という節目の年。この展覧会は、カーサ・デル・アバーテ・ナルディのオーナー、ロレンツァ・サント女史のご厚意により実現しました。
さらに、同館に隣接するギャラリー、マヌファクトストアの椎名香織女史、リカルド・ナルディ氏、そしてイル・リーゴのルイーザ・チポッラ女史、マティアス・ルゲ氏の多大なご協力を得て、三会場での同時開催が叶いました。

カーサ・デル・アバーテ・ナルディでは、16世紀から続く歴史ある邸宅の玄関ホールにて、ロール状に仕立てた作品40点を両壁に展示。5メートルを超える高い天井の下、中村の風を纏うような軽やかなスナップショットが空間を生き生きと彩ります。また、中央テーブルには、次女で書家の創楽さんによる展覧会タイトル「光の音」の書と共に、40点のスナップも紹介されました。

第2会場となるマヌファクトストアでは、椎名女史とナルディ氏の手によって、選りすぐりの9点が丁寧に展示され、会場内では記念ポストカード(4枚組・2種)や小冊子も販売されています。

そして、作品の舞台そのものであるイル・リーゴでは、ルイーザ女史と共に思い出深い12点をセレクトして展示。
写真の背景となった人々や風景、その時の空気が今も息づくような、懐かしくあたたかな展示空間となりました。

展覧会初日の4月5日は、各会場がオープン!
カーサ・デル・アバーテ・ナルディでは、ロレンツァ女史によるトークとウェルカムドリンクが振る舞われ、イル・リーゴでは『Alle porte co’ sassi』の著者ディヴァ・オルフェイ氏によるトークショーと、親睦パーティが催されました。
親戚や友人、ゲストが長いテーブルを囲み、美味しい料理とワインで語らう光景は、まさに「これぞイタリア」と感じさせる特別な時間でした。

自然と人、人と人のつながり、生きる喜びを、圧倒的なスケール感で表現した中村ハルコ。
その作品に込められた想いが、多くの人の心に届いた、まさに夢のような展覧会の開幕となりました。

中村ハルコ写真展
「光の音-1990年代ヴァル・ドルチャの儚い瞬間」 

プレスリリース(日本語)
プレスリリース(イタリア語)

会期:4月5日(土)~4月28日(月)
伊・トスカーナ、ヴァル・ドルチャ3カ所で同時開催 
会場:カーサ・デル・アバーテ・ナルディ/マヌファクト・ストア/ イル・リーゴ 

会場:
◯カーサ・デル・アバーテ・ナルディ 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時~午後7時 
無定休、入場無料

◯マヌファクト・ストア 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時-13時、16時-19時 
定休日:火曜、入場無料 

◯イル・リーゴ 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時-13時、15時―19時 
無定休、入場無料 

スペシャルイベント 
4月5日(土) オープニング&トークショー 
お問い合わせ:
 マニュファクㇳ・ストア(イタリア)
info@manufacto-store.com
フォルマーレ・ラ・ルーチェ(日本)
info@formarelaluce.jp

イタリア会場 Casa dell’Abate Naldi blog
Haruko Nakamura – Photography Exhibition 

Photographer hana インタビュー

hana近影
hana近影

hana:このプロジェクトを始めたのは19歳のときです。
「自分にしか撮れないものって何だろう?」とずっと考えていました。
そのとき、センシティブな10代の女の子たちの世界に入り込むことは、私だからこそできることではないかと思い、部屋を撮影するアイデアが浮かびました。 

部屋という空間は、最もプライベートであり、ありのままの自分を映し出す場所ですよね。
誰もが自由に簡単に踏み入れられるわけではありません。友達の家を訪れると、その友達の個性が室内に溢れていて、性格までもが空間に投影されていることに気づきました。 例えば、表面的にはきちんとしているように見えていても、タンスの中には服が雑然と詰め込まれていたりして、その人の性格が現れる。それがとてもおもしろいなと思い、撮影を始めました。
最初からプロジェクトとして計画したわけではなく、きっかけは女の子、つまり友達の姿を撮ることから始まりました。

hana:それは、ママへのオマージュのようなことなのかもしれません。
ママは写真家でしたが、私が1歳のときに亡くなったため、記憶はほとんどありません。 
幼い頃から、家の中のあちこちでママが撮った写真を見つけました。
それで思ったんです。ママは、自分が消えてしまうことを知りしながらも、写真によってその瞬間を必死に捉えようとしていたのだと。 

hana:そうなんです。「その瞬間を生きること」――当たり前のように聞こえますが、実はとても大切なことです。
一度過ぎた時間は決して戻ってこないんですよ。私は10代に強いこだわりがありました。
まさにその時期の真っ只中にいたんです。 20歳になれば変わってしまうんじゃないかと思っていて、この10代という、誰もが憧れたり、戻りたいと思うような時間が、すり抜けるように過ぎていくことへの怖さを感じていました。
それがママへの思いと重なるというか、「今、捉えないといけない」「今、撮ることが自分の使命だ」と強く思ったんです。 
この思いのきっかけは、やっぱりママの写真だと言いたいです。
ママと一緒にいた記憶はないけれど、その写真が、それを証明してくれているような気がします。 

羽永|Hana
写真集「少女惑星」

hana:そうですね。それ、今もめっちゃあります。その思いは変わらないです。 
20歳になったからといって、写真を撮らなくなったわけではありません。ただ、20歳という節目を迎えたことで、撮る対象や視点が少し広がったように感じています。 10代から20代へと移り変わることで、少しペースが変わった部分もあるかもしれません。
でも、今はイギリスにいて、この期間はあと1年しか残されていない。だからこそ、「今、撮らなければ」と強く感じています。
時間の儚さや、一瞬の大切さを改めて意識することもあります。

hana:モデル探しは、友人の紹介のほか、インスタグラムで女の子たちを探し、直感的に「この子だ」と思った人に連絡を取る形で進めました。 共通点として、好きなものがはっきりしている子を自然と選んでいたのかもしれません。
例えば、音楽が好きな子、ファッションにこだわりがある子、アニメに夢中な子――そうした個性が明確な人に惹かれる傾向があったと思います。 
撮影時の緊張は常にありました。メッセージのやりとりだけで、実際に会ったことのない人の家に初めて訪れるのは、とても緊張するものです。
特に、同年代よりも年配の方の撮影では、さらに緊張感が強かったです。

hana:実は聞きづらくて、年齢までは確認していないんです。
「少女」という概念をどう定義するのかは、とても難しい。

hana:深いテーマですね。本当に考え始めると、どんどん話したくなる内容です。
同年代の人とはシンパシーが強すぎて、まるでクラス替えで新しい友達と話すような独特の緊張感があります。 
緊張する場面について言えば、撮影の際はまずしっかりコミュニケーションを取ることを心がけていました。
私はもともと人見知りなので、誰とでもスムーズに話せるわけではなく、相手によっては会話に戸惑うこともあります。 
もちろん、新しい人と話すことは楽しいと思っていますが、それと同時に、初対面の人と交流することは私にとってかなりのストレスにもなることがあります。

hana:そうですね。そして、まず自分が心を開かないと、相手も心を開かないということを学びました。 
撮影の際は、最初から相手に質問を投げかけることも大切ですが、警戒心がある人も多いんですよね。
だからこそ、まず自分のことを話すことが重要だと気づきました。
例えば、「昨日こんなことがあったんですよ」といった、些細なことでも話してみる。
初対面の人に対して、友達のような距離感で接するのを苦手に感じる人もいるかもしれませんが、こうして自分のことを話すことで、相手も「自分のことを話していいんだ」と思えるようになる。
それを実際に感じ取れました。 
「コツ」と言うと少し計算的に聞こえてしまいますが、自然とそういうコミュニケーションを取っていました。

hana:話すことに徐々に慣れてきてコミュニケーションがとれるようになってきました。
英語で会話をするのですが、皆さん本当に話し好きです。
海外の方は、日本とは少し違う印象があります。 日本は、人見知りの方が多いし、話を合わせながら徐々に広がっていくような感じです。
でも、海外の方はとても好奇心旺盛で、たくさんのことを聞いてきます。 
イギリスには本当にさまざまな国の人が住んでいて、国籍の幅広さが特徴です。
アメリカやカナダから来た人もいるし、文化的な違いがあるのがおもしろい。
アジアの国の人たちの特徴も感じられます。
 今は、たくさんの人と出会える機会が巡ってきていて、このプロジェクトを通して本当に助けられています。

hana:絶対に達成したいです。これは自分の自信にもつながると思います。
今まで何かを続けることが苦手で、好きなことがあっても三日坊主で終わってしまうことが多かったんです。
でも、このプロジェクトは続いている。 
まるで、一人の人格を持った存在のように、このプロジェクトが私の手を引っ張って「一緒に行こう」と導いてくれているような感覚があります。 
共に走っているような気がして、これがあるからこそ前に進める。だからこそ、このプロジェクトは私にとって特別なものになっています。 

hana:10代の子たちを中心に撮影していましたが、彼女たちは本当に自分の好きなものをしっかり理解していて、すでに「何者か」になっているように感じました。 10代は自分を模索する時期で、「自分は何者なのか、何者になりたいのか」を探す時期だと思います。
しかし、撮影をしていると、すでにその答えを持っているかのような子もいて、それが部屋に表れている。
撮影を始めた当初、私は20歳が近づくことに恐怖を感じていました。
10代が終わること、価値が薄れてしまうのではないかと不安を抱えていました。
でも、彼女たちと話すうちに、「年齢は本当にただの数字でしかない」と気づきました。
16歳でも驚くほどの人生経験を積んできたような子もいましたし、逆に年齢を重ねても無邪気で子供のような純粋さを持つ人もいました。
だからこそ、「少女とは何か?」と問われると、正直わからないんです。
でも、少女とは、ひとつの括りではなく、永遠に続くもののように感じます。

hana:YouTubeですね。予測していなかった動画が突然バズることもありますし、その反応がまったく予測できないのが楽しいです。 YouTubeを始めたことで、日常を俯瞰して見るようになりました。
そのおかげで、「今イギリスにいることの大切さ」や「当たり前ではない日々」をより実感するようになりました。
また、視聴してくださる方が、私の日常をどう見たいのかを意識することで、自分自身の生活も客観的に見つめ直すようになりました。配信しているブログは、自分の人生の断片を切り取るものですが、それを見て「ああ、自分は今イギリスに留学しているんだな」と気づくことができる。
そうした映像や記録が積み重なることで、自分自身が生きている環境を再認識し、感動することもあります。

hana:イギリスに来て、たくさんの刺激を受けました。

写真もやりたいし、さまざまなことに挑戦したい――そう思っていたとき、「自分が有名になれば、自分のアートも知ってもらえるのではないか」と考えました。 
私は、自分自身が有名になりたいわけではなく、私が作るものをより多くの人に知ってもらうためのツールとしてYouTubeを活用できるのではないかと思ったんです。
 YouTubeを始めたことで、日常の些細な出来事を発信しながら、自分の性格をより身近に感じてもらえる機会になったと思います。

hana:ロンドンの学生生活で特に感じたのは、発言の文化の違いです。 
日本では授業中の発言が挙手制で、自分から発言しなくても問題ありません。
しかし、海外では突然意見を求められることが多く、「自分の考えを持ち、それを言葉にして伝えること」が日常的に求められます。
 その文化的な違いによって、みんな自然と自分の考えを持ち、それをしっかり言葉にできるようになっていると感じますね。
私はまだ苦手なので、そうした姿勢を身につけている人たちが羨ましく思います。
行ってみたい場所は、今年インドに行く予定です。
そして、ママがアフリカを拠点に写真を撮っていたこともあり、アフリカへ行くのがずっと夢でした。
 自分の国とはまったく異なる環境へ行き、新しい刺激を受けたいと思っています。

hana:卒業後は、ヨーロッパ各地を巡りながら撮影を続けて、日本に帰国したら韓国、台湾、香港でも撮影を行い、100人の写真集を完成させる予定です。 また、ロンドンで撮影した記録を写真集にまとめることも考えています。
さらに、ドキュメンタリー的な写真にも挑戦したいと思っています。
例えば、ドラッグ・クイーンの舞台裏を撮影する人のように、何かの現場に密着して記録を残していくことに興味があります。
でも、人との関係に気を使いすぎてしまう自分の性格が障壁になっている部分もあります。 
「今、シャッターを切らないとこの瞬間を逃すかもしれない」と思いながらも、撮ることをためらう――その葛藤を乗り越えることが、私にとっての挑戦です。

中村ハルコ写真展 「光の音-1990年代ヴァル・ドルチャの儚い瞬間」 「Sound of Light―Attimi fuggenti nella Val d’Orcia degli ’90」 2025年4月、伊・トスカーナ、ヴァル・ドルチャ3カ所で同時開催 

中村ハルコ写真展
「光の音-1990年代ヴァル・ドルチャの儚い瞬間」 

プレスリリース(日本語)
プレスリリース(イタリア語)

会期:4月5日(土)~4月28日(月)
伊・トスカーナ、ヴァル・ドルチャ3カ所で同時開催 
会場:カーサ・デル・アバーテ・ナルディ/マヌファクト・ストア/ イル・リーゴ 

会場:
◯カーサ・デル・アバーテ・ナルディ 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時~午後7時 
無定休、入場無料

◯マヌファクト・ストア 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時-13時、16時-19時 
定休日:火曜、入場無料 

◯イル・リーゴ 
会期:4月5日(土)~4月28日(月) 
開館時間:10時-13時、15時―19時 
無定休、入場無料 

スペシャルイベント 
4月5日(土) オープニング&トークショー 
お問い合わせ:
 マニュファクㇳ・ストア(イタリア)
info@manufacto-store.com
フォルマーレ・ラ・ルーチェ(日本)
info@formarelaluce.jp

イタリア会場 Casa dell’Abate Naldi blog
Haruko Nakamura – Photography Exhibition 

2025年1月11日(土)東京ZINE FESTに参加します!

2025年1月11日(土)東京ZINE FESTに参加します!
https://note.com/bookcultureclub/n/nba43c5c49ea1

フォルマーレ・ラ・ルーチェは「A15 五階入口を背にして一番左のライン真ん中あたり」に出展しています

羽永「少女惑星」
中村ハルコ「魚を売るイネさん82歳」
岩崎マミ「envision」
木下伊織「Gaia」

フォルマーレ・ラ・ルーチェでおなじみの写真家のZINEを販売します!
ぜひ遊びに来てください!

イベント概要

ZINEフェス東京(ZINE FEST TOKYO)
2025年1月11日(土)
開催時間:12時-17時
入場料:500円(当日入り口・現金のみ)
階数:5階/6階
東京都立産業貿易センター 台東館(浅草駅徒歩5分)
〒111-0033 東京都台東区花川戸2丁目6−5(Googleマップ)