写真表現の可能性、新たな楽しみ方を模索するプロジェクト。 今回は、6名(伊賀美和子、池田宏彦、西郡友典、馬場智行、守田衣利、山下隆博)の作品上映とおおば英ゆき、村越としや、そして小さな森のロッジで展示中の中村ハルコの作品に曽我部恵一がDJを試みます。
日時:2015年8月1日(土) 20時より ※終了しました 会場:「ロックの図書館」準備室 併設カフェ インフォメーション:http://oharabreak.com
「Elements of light -それぞれの光- 」 第一部 写真家(中村ハルコ、おおば英ゆき、村越としや)の作品と曽我部恵一のDJコラボレーション。 中村ハルコは、小さな森のロッジで展示中の作品「太陽と風のワトト」、おおば英ゆきは10年越しの作品「チョコレート・ドリームス」、そして、福島県須賀川出身の村越としやは故郷を題材に制作した「火の粉は風に舞い上がる」を上映する。静と動の写真作品に曽我部はどのようなDJアレンジを試みるのか?サウンドライブに乞うご期待。
第二部 「Elements of light それぞれの光 」は、写真×音、音楽のコラボレーションにより写真表現の見え方、新たな楽しみ方を模索するフォルマーレ・ラ・ルーチェが企画するプロジェクト。 今回は、伊賀美和子、池田宏彦、西郡友典、馬場智行、守田衣利、山下隆博の6名の写真作品を紹介します。写真表現の多様性と豊かさを音楽の調べとともにお楽しみください。
中村 ハルコ 「太陽と風のワトト」 アフリカ・タンザニアで出会った少年、ラジャブ。そこから写真家、中村ハルコの新たなストーリーが始まります。質素な暮らし、厳しい現実とは裏腹に、大地を風のように駆け抜け、日常をたくましく生きるワトト(子供たち)が存在していたのです。みずみずしい視点を持って、子供たちの姿を写真に収めた中村ハルコ。今回は、彼女の1980年代に撮影された貴重な初期作品をご紹介します。 プロフィール: 1962-2005 宮城県仙台市出身。1985年日本大学芸術学部写真学科修了。2000年写真新世紀優秀賞受賞、写真新世紀展2000」において年間グランプリ受賞。2000年宮城県芸術選奨芸術選奨新人賞受賞 2008年「光の音-pure and shimple」(フォルマーレ・ラ・ルーチェ)出版。2010年「日本の新進作家展vol.9 かがやきの瞬間展」 (東京都写真美術館)に参加。
おおば英ゆき 「チョコレート・ドリームス」 「ぼくは誰なんだろう。ぼくは何をみているんだろう。ぼくは今どこにいるんだろう。 チョコレートが溶けている。チョコレートが流れている。チョコレートが溢れている。」 世界はチョコレートに覆われることで、本当の姿を現す。チョコレート・ドリームスとは今のこの世界の風景そのものであるとぼくは思うのだ。 プロフィール: 北海道出身。1985年 千葉大学工学部画像工学科卒業。2004年 京都造形芸術大学通信教育部情報デザイン卒業。「チョコレート・ドリームス」:京都造形芸術大学学長賞受賞(2004年)、写真新世紀2004年度[第27回公募]優秀賞受賞(南條史生選)、In WARSAW INPRINT2008、[GRAPHIC ARTS TRIENNIAL] 入選(2008年)岡本太郎現代芸術賞入選(2010年)、国際ピースアートコンテスト入選(2011年)。
村越 としや 「火の粉は風に舞い上がる」 夕暮れが迫る群青の空に優しい線を描く火の粉はまるで赤い蛍だった、そして強い風が吹き抜ける瞬間にだけ炎は少し音を発て、たくさんの赤い粒を辺りに撒き散らした。赤い光の粒は群青から藍へと変わる空に次々と吸い込まれるように消えた、それらを眼で追いながら光はどこへ行ってしまうのかを考えていた。空は更に深く濃く沈んでゆき、そこから徐々に浮かび上がる小さな灯りにじっと眼を凝らした。風に飛ばされ、舞い上がり、消えてゆく、そんな火の粉を繰り返し見ているうちに日は完全に沈み、肌に寒さを感じた、そしてぼくはとても大切なものを無くしたときに覚えた寂しさと似た感情にようやく気が付いた。暗い田んぼ道に火の気はもう無い、吹く風は冷たさを増し、色の消えた空にはいくつかの星が見えた。 プロフィール: 1980年福島県須賀川市出身。2003年日本写真芸術専門学校卒業。2009年TAPを設立、2011年写真協会賞新人賞。主な写真集に「あめふり」(2006年、蒼穹舍)、「草をふむ音」(2008年、蒼穹舍)、「浮雲」(2009年、TAP)、「雪を見ていた」(2010年、TAP)、「土の匂いと」(2011年、TAP)、2012年写真集レーベル「plump WorM factory」を立ち上げる。
伊賀 美和子 「午後の曳航(2015年)」 小さな人形を被写体にして、これまでは、傷つき、傷つけられる思いを心象風景にして描き写真にしてきました。人間は脆い小さな存在ということをユーモラスを交えて皮肉に表現する制作意図があったからです。制作を始めて15年の間にあえてアートでそれを表現しなくてもよい大きな出来事がありました。わざわざ不幸の淵を歩かずも私たちの生活は危険に満ちていることに気づいてしまったのです。 Lifestyle Of Hurts And SicknessからLifestyle Of Health and Sustainabilityへ。 傷つき、戦ってきたから、今あるひとときの安定を持続させたいと感じ始めています。大人になっても今いる位置が正しいのか、そしていくつになっても先の風景はぼんやりしていてよく見えないのですが、ひとつの道を同じ足で歩んできたことに自信を持ちながら生きていく心をこれからも描いていきたいと思います。 プロフィール: 東京都出身。1999年写真新世紀優秀賞受賞。「A STORM IN THE LIFE ―台風一家―」(2000年、セゾンアートプログラムギャラリー、東京)、「テンペスト・イン・ティーポット」(2003年、小出由紀子事務所、東京)、「Madame Cucumber」(2007年、ベイスギャラリー、東京、イヒョン・ソウル・ギャラリー、ソウル)、「悲しき玩具 ~ The Open Secret」(2010年、ベイスギャラリー、東京)、「PHotoEspana 2012 Asia Serendipity」(2012年、マドリッド、マラガ/バリャドリッド、スペイン)
池田 宏彦 「echoes」 イスラエルのネゲヴ砂漠で撮影した作品です。 砂漠の中で何カ所か場所を決めて、夜・昼・人がいる時いない時など違ったシチュエーションを同じ構図で撮影し、それらを重ね合わせて1本の映像にまとめました。 本来同じ時に一緒にはいられないものたちを、たとえかりそめにでも共存させることで、僕らが日々の暮らしの中で捉えている現実とはちょっと違う層の現実を一種の「視覚的なたとえ」として表せないかという試みでした。今回ブライアン・イーノの曲を使っているのも曲の素晴らしさはもちろんですが歌詞の中の、単純に直訳すると「君はまるで遠くからのように僕に話しかけ、僕は別の時間から選んだ印象でそれに答える」という部分がこの作品の中身と重なると感じたためです。 プロフィール: 1971年東京都出身。1995年明治学院大学社会学部社会学科卒業 1996-1997年中東旅行、「ネゲブにて」を制作。1998年写真新世紀優秀賞受賞。 2001-2002年中東旅行「ネゲブにて2002」を制作。2006年「ネゲブにて2002」イスラエル大使館大使公邸。 2007年「ネゲブにて2002」銀座ニコンサロンにて個展開催。2010年「日本の新進作家展vol.9 ーかがやきの瞬間展」(東京都写真美術館)に参加。
西郡 友典 「青い空の日に」 旅に出ましょう。きらめきに出会いに。青い空の日に。 目の前の景色が、ときおりキラリと光って見えた気がするときがあります。 例えば、傍らに誰かがいたなら、「見て、見て! 」って指さして伝えたくなるような、気持ちがすこし持ち上がってフワリとふくらむような景色。 この写真集は、日常のなかで、旅の途中で、その時の私の目にほんの一瞬きらりと輝いて “見えた気がした”景色の集まりです。 プロフィール: 福島県いわき市生まれ。東京在住。2001年キヤノン写真新世紀第23回公募優秀賞(荒木経惟選)。写真集「途切れ時間の夢」(2003年、青幻舎)、写真集「青い空の日に」(パイ インターナショナル/ピエ ブックス)2012。
馬場 智行 「ACRYL」 水族館の魚達を、我々の現在、或いは未来の姿を暗示するモチーフとして、水槽のアクリル壁を境界線と見立て捉えたものである。水槽の中で生きる魚達の姿から、自分達人間の存在について思考するための作品である。 プロフィール: 和歌山県生まれ。天理大学文学部歴史文化学科考古学専攻卒業。グループ展に「GAW展7」「Elements of light それぞれの光 partⅡ・partⅢ」等。個展に「Acryl」「Suburbian Tapestry」等。受賞:Nikon Salon juna21入賞。56回全国カタログ展「全国中小企業団体中央会会長賞」受賞。作品集「ACRYL」刊行。
山下 隆博 「吹雪の日/凪の海」 北海道後志地方の岩内町に私は生まれ高校卒業までの18年間を過ごした。右を見れば羊蹄山を初めとした山々が広がり、左を見れば日本海が広がっている。そんな風光明媚な場所に私は生まれた。そして、私が生まれた1984年に隣の泊村では原子力発電施設の着工が始まった。 ルスツにはスキー場がある。共和町では畑作の風景広がっている。寿都村の海沿いには沢山の風力発電施設がある。原発はそれらと何の変わりもない当たり前の風景だった。 私が故郷を見る時にはどうしても二人の事を考えずにはいられない。 故郷に根ざし、漁師として生計を立てながらも懸命に自然の美しさと厳しさ、そしてそこに生きる人達の息づかいを丹念に描き、自身の画業を積み重ねてきた画家の木田金次郎。 そして、自身の信念に嘘をつく事なく鋭い眼差しで原発問題にしがみつく様に仕事を続け、社会的な立場においての責任の取り方を体現している写真家の樋口健二。 二人の目を通して私は故郷を見ている。それは原発問題を考える時に重要な事なのではないのかと考えている。 プロフィール: 1984年北海道出身。2005年日本写真芸術専門学校二部卒業。現在は東京を拠点に、インドの社会問題や河川環境、原発問題などを主な題材として活動をしている。 個展:”吹雪の日/凪の海”(2015年、有島記念館/北海道、東塔堂/東京)、”これまでのつづき”(2015年、space dike/東京)。 出版物:”吹雪の日/凪の海”(2014年、Libro Arte)、”二十二世紀写真史”(2014年、A組織/掲載参加)、”REVELATIONS”(2013年、Le Lezard Noir掲載参加)。
守田 衣利 「Close your eyes, make a wish.」 人が産まれて初めて見るものは光。過去、現在、未来を紡いでいるのも、一筋の光。光の先をずっとたどっていけば、ここにはもういない人、ここに産まれてこられなかった人たちに繋がっているような気がする。人はどこからかやってきて、わたしの隣りをしばらく歩いて、彼方へと去っていく。時間を切り取って、とじこめよう。今が永遠に続かないことはわかっている。それがことさら悪いことでもないと知っている。きつく握りしめた手を離そう。 その柔らかい手をずっと握っていたかった けれど、時間がわたしたちを分け隔てていく。 眼を閉じれば、また会える。眼を閉じれば、鮮やかにあの光景が蘇る。わたしは祈りの言葉をもっていない。そのかわりに、シャッターを切り続ける。雨が水面を乱しては消えていくように、気づかれることもなく過ぎていく時を掬いとる。 プロフィール: 熊本県生出身。 フェリス女学院大学卒業後、出版社、作家アシスタントを経て、ニューヨークへ移住。 1997年国際写真センター、ジェネラルスタディース修了。1998年写真新世紀優秀賞受賞(選:ホンマタカシ)。1999年から撮り続けている『ホームドラマ』シリーズが、2005年に写真集として出版された。国内外にて個展、グループ展、スライドショーに参加している。