YouTubeチャンネル「はなのにちようび」の配信をはじめ、個性豊かな10代の少女たちを取材しそのプライベート空間を写真で浮き彫りにしてきたhana。
瑞々しく、どこか懐かしさを感じさせる独自の写真表現は、変わりゆく少女たちの“今”を鮮やかに映し出している。
ファースト写真集『少女惑星』に込めた思い、プロジェクトへの意気込み、そしてYouTube配信についてインタビュー。
―hanaさんの少女惑星は、20歳の時に撮りまとめられた初めての写真集ですね。
同世代の女の子たち21人のお部屋を撮るというアイデアは、どのようにして生まれましたか。

hana:このプロジェクトを始めたのは19歳のときです。
「自分にしか撮れないものって何だろう?」とずっと考えていました。
そのとき、センシティブな10代の女の子たちの世界に入り込むことは、私だからこそできることではないかと思い、部屋を撮影するアイデアが浮かびました。
部屋という空間は、最もプライベートであり、ありのままの自分を映し出す場所ですよね。
誰もが自由に簡単に踏み入れられるわけではありません。友達の家を訪れると、その友達の個性が室内に溢れていて、性格までもが空間に投影されていることに気づきました。 例えば、表面的にはきちんとしているように見えていても、タンスの中には服が雑然と詰め込まれていたりして、その人の性格が現れる。それがとてもおもしろいなと思い、撮影を始めました。
最初からプロジェクトとして計画したわけではなく、きっかけは女の子、つまり友達の姿を撮ることから始まりました。
―写真に目覚めたきっかけはなにかありますか?
hana:それは、ママへのオマージュのようなことなのかもしれません。
ママは写真家でしたが、私が1歳のときに亡くなったため、記憶はほとんどありません。
幼い頃から、家の中のあちこちでママが撮った写真を見つけました。
それで思ったんです。ママは、自分が消えてしまうことを知りしながらも、写真によってその瞬間を必死に捉えようとしていたのだと。
―胸にグッと込み上げてくるものがありますね。
hana:そうなんです。「その瞬間を生きること」――当たり前のように聞こえますが、実はとても大切なことです。
一度過ぎた時間は決して戻ってこないんですよ。私は10代に強いこだわりがありました。
まさにその時期の真っ只中にいたんです。 20歳になれば変わってしまうんじゃないかと思っていて、この10代という、誰もが憧れたり、戻りたいと思うような時間が、すり抜けるように過ぎていくことへの怖さを感じていました。
それがママへの思いと重なるというか、「今、捉えないといけない」「今、撮ることが自分の使命だ」と強く思ったんです。
この思いのきっかけは、やっぱりママの写真だと言いたいです。
ママと一緒にいた記憶はないけれど、その写真が、それを証明してくれているような気がします。

―自分が変わっていく、10代が終わるという、世代の移り変わりに伴う儚さを含めて、すべて記録しておきたかったのかもしれませんね。
hana:そうですね。それ、今もめっちゃあります。その思いは変わらないです。
20歳になったからといって、写真を撮らなくなったわけではありません。ただ、20歳という節目を迎えたことで、撮る対象や視点が少し広がったように感じています。 10代から20代へと移り変わることで、少しペースが変わった部分もあるかもしれません。
でも、今はイギリスにいて、この期間はあと1年しか残されていない。だからこそ、「今、撮らなければ」と強く感じています。
時間の儚さや、一瞬の大切さを改めて意識することもあります。
―写真集で写された方々のご自宅にお邪魔して、二人きりで撮影するとなると、緊張する場面もあったのではないかと思います。
打ち解けるために、どのようにしてコミュニケーションを取られましたか?
また、被写体探しや彼女たちへのオファーはどのように行われたのでしょうか。
hana:モデル探しは、友人の紹介のほか、インスタグラムで女の子たちを探し、直感的に「この子だ」と思った人に連絡を取る形で進めました。 共通点として、好きなものがはっきりしている子を自然と選んでいたのかもしれません。
例えば、音楽が好きな子、ファッションにこだわりがある子、アニメに夢中な子――そうした個性が明確な人に惹かれる傾向があったと思います。
撮影時の緊張は常にありました。メッセージのやりとりだけで、実際に会ったことのない人の家に初めて訪れるのは、とても緊張するものです。
特に、同年代よりも年配の方の撮影では、さらに緊張感が強かったです。
―年配の方? 年上のお姉さんという方は、具体的に何歳くらいの方になりますか?
hana:実は聞きづらくて、年齢までは確認していないんです。
「少女」という概念をどう定義するのかは、とても難しい。
―ご自身では、「少女」という概念をどのように捉えていらっしゃいますか?
hana:深いテーマですね。本当に考え始めると、どんどん話したくなる内容です。
同年代の人とはシンパシーが強すぎて、まるでクラス替えで新しい友達と話すような独特の緊張感があります。
緊張する場面について言えば、撮影の際はまずしっかりコミュニケーションを取ることを心がけていました。
私はもともと人見知りなので、誰とでもスムーズに話せるわけではなく、相手によっては会話に戸惑うこともあります。
もちろん、新しい人と話すことは楽しいと思っていますが、それと同時に、初対面の人と交流することは私にとってかなりのストレスにもなることがあります。
―このプロジェクトを通じて、ご自身の殻を破り、自分自身を改善し、新たな自分を発見する機会になったのですね。
hana:そうですね。そして、まず自分が心を開かないと、相手も心を開かないということを学びました。
撮影の際は、最初から相手に質問を投げかけることも大切ですが、警戒心がある人も多いんですよね。
だからこそ、まず自分のことを話すことが重要だと気づきました。
例えば、「昨日こんなことがあったんですよ」といった、些細なことでも話してみる。
初対面の人に対して、友達のような距離感で接するのを苦手に感じる人もいるかもしれませんが、こうして自分のことを話すことで、相手も「自分のことを話していいんだ」と思えるようになる。
それを実際に感じ取れました。
「コツ」と言うと少し計算的に聞こえてしまいますが、自然とそういうコミュニケーションを取っていました。
―ご自身の人見知りも改善されていくような感覚ですね。共に良い空気が流れ、互いに浄化されていくような。
hana:話すことに徐々に慣れてきてコミュニケーションがとれるようになってきました。
英語で会話をするのですが、皆さん本当に話し好きです。
海外の方は、日本とは少し違う印象があります。 日本は、人見知りの方が多いし、話を合わせながら徐々に広がっていくような感じです。
でも、海外の方はとても好奇心旺盛で、たくさんのことを聞いてきます。
イギリスには本当にさまざまな国の人が住んでいて、国籍の幅広さが特徴です。
アメリカやカナダから来た人もいるし、文化的な違いがあるのがおもしろい。
アジアの国の人たちの特徴も感じられます。
今は、たくさんの人と出会える機会が巡ってきていて、このプロジェクトを通して本当に助けられています。
―今、目指しているのは100人の方の撮影でしたね。
hana:絶対に達成したいです。これは自分の自信にもつながると思います。
今まで何かを続けることが苦手で、好きなことがあっても三日坊主で終わってしまうことが多かったんです。
でも、このプロジェクトは続いている。
まるで、一人の人格を持った存在のように、このプロジェクトが私の手を引っ張って「一緒に行こう」と導いてくれているような感覚があります。
共に走っているような気がして、これがあるからこそ前に進める。だからこそ、このプロジェクトは私にとって特別なものになっています。
―被写体の方たちは、女の子というより、自分と向き合い、何かを極めようとする強い意志を持つ女性たちに感じるのですが、hanaさんにとって彼女たちはどのような存在なのでしょうか?
hana:10代の子たちを中心に撮影していましたが、彼女たちは本当に自分の好きなものをしっかり理解していて、すでに「何者か」になっているように感じました。 10代は自分を模索する時期で、「自分は何者なのか、何者になりたいのか」を探す時期だと思います。
しかし、撮影をしていると、すでにその答えを持っているかのような子もいて、それが部屋に表れている。
撮影を始めた当初、私は20歳が近づくことに恐怖を感じていました。
10代が終わること、価値が薄れてしまうのではないかと不安を抱えていました。
でも、彼女たちと話すうちに、「年齢は本当にただの数字でしかない」と気づきました。
16歳でも驚くほどの人生経験を積んできたような子もいましたし、逆に年齢を重ねても無邪気で子供のような純粋さを持つ人もいました。
だからこそ、「少女とは何か?」と問われると、正直わからないんです。
でも、少女とは、ひとつの括りではなく、永遠に続くもののように感じます。
―今、一番面白いと感じていることについて教えていただけますか?
hana:YouTubeですね。予測していなかった動画が突然バズることもありますし、その反応がまったく予測できないのが楽しいです。 YouTubeを始めたことで、日常を俯瞰して見るようになりました。
そのおかげで、「今イギリスにいることの大切さ」や「当たり前ではない日々」をより実感するようになりました。
また、視聴してくださる方が、私の日常をどう見たいのかを意識することで、自分自身の生活も客観的に見つめ直すようになりました。配信しているブログは、自分の人生の断片を切り取るものですが、それを見て「ああ、自分は今イギリスに留学しているんだな」と気づくことができる。
そうした映像や記録が積み重なることで、自分自身が生きている環境を再認識し、感動することもあります。
―YouTubeを始めようと思ったきっかけは何ですか?
hana:イギリスに来て、たくさんの刺激を受けました。
写真もやりたいし、さまざまなことに挑戦したい――そう思っていたとき、「自分が有名になれば、自分のアートも知ってもらえるのではないか」と考えました。
私は、自分自身が有名になりたいわけではなく、私が作るものをより多くの人に知ってもらうためのツールとしてYouTubeを活用できるのではないかと思ったんです。
YouTubeを始めたことで、日常の些細な出来事を発信しながら、自分の性格をより身近に感じてもらえる機会になったと思います。
―ロンドンの学生生活は日本と違いますか?また、行ってみたい国はありますか?
hana:ロンドンの学生生活で特に感じたのは、発言の文化の違いです。
日本では授業中の発言が挙手制で、自分から発言しなくても問題ありません。
しかし、海外では突然意見を求められることが多く、「自分の考えを持ち、それを言葉にして伝えること」が日常的に求められます。
その文化的な違いによって、みんな自然と自分の考えを持ち、それをしっかり言葉にできるようになっていると感じますね。
私はまだ苦手なので、そうした姿勢を身につけている人たちが羨ましく思います。
行ってみたい場所は、今年インドに行く予定です。
そして、ママがアフリカを拠点に写真を撮っていたこともあり、アフリカへ行くのがずっと夢でした。
自分の国とはまったく異なる環境へ行き、新しい刺激を受けたいと思っています。
―卒業後の予定は?
hana:卒業後は、ヨーロッパ各地を巡りながら撮影を続けて、日本に帰国したら韓国、台湾、香港でも撮影を行い、100人の写真集を完成させる予定です。 また、ロンドンで撮影した記録を写真集にまとめることも考えています。
さらに、ドキュメンタリー的な写真にも挑戦したいと思っています。
例えば、ドラッグ・クイーンの舞台裏を撮影する人のように、何かの現場に密着して記録を残していくことに興味があります。
でも、人との関係に気を使いすぎてしまう自分の性格が障壁になっている部分もあります。
「今、シャッターを切らないとこの瞬間を逃すかもしれない」と思いながらも、撮ることをためらう――その葛藤を乗り越えることが、私にとっての挑戦です。
―毎日が練習で、毎日がまさにライブのような日常でいらっしゃいますね。
仲間たちと共に、新しいクリエイティブをたくさん生み出していく!
hanaさんの輝ける未来にエールを送ります!
ありがとうございました。